奈緒ちゃんとP。その4。 [SS]

奈緒 「Pさん,あけましておめでとさん」
P 「おう!あけましておめでとう!」
奈緒 「ことしもよろしくな」
P 「こちらこそってやつだ」
奈緒 「初詣は・・・どうする?」
P 「あー、どうしよっか。美波たちは二年参りやってるらしいけどまざるか?」
奈緒 「なんかみりあちゃんがおねむでもうそろそろ帰るらしいぞ?」
P 「ふむ、なら明日の朝でいいか」
奈緒 「とかいいつつもどうせ起きるのお昼じゃねぇか」
P 「正月の朝って昼のことだろ」
奈緒 「昼は昼」
P 「アーアーキコエナーイ」
奈緒 「んじゃおせちやお雑煮はアタシだけで食べちゃうか」
P 「それは無理っしょ」
奈緒 「んじゃ凛と加蓮も呼ぶ」
P 「ごめんなさい」
奈緒 「ハァ・・・新年そうそうPさんはいつも通りだな」
P 「そう簡単に人は変わらないさ」
奈緒 「なーにカッコつけてんだか」
P 「はっはっは」
奈緒 「笑ってごまかさない」
P 「ハハハ・・・とりあえずハイ、お年玉」
奈緒 「おっ、ありがと」
P 「お前の給料に比べれば微々たるもんだろうけどな」
奈緒 「気持ちだけでも十分うれしいよ」
P 「そう言ってもらえると助かる」
奈緒 「明日・・・いやもう今日か?メシ、楽しみにしとけよなっ。腕によりをかけっからさ」
P 「おっ!嬉しいこといってくれるじゃないの」
奈緒 「貰った恩はきちんと返さないとな」
P 「奈緒ちゃんはいい子だなぁ・・・」ナデナデ
奈緒 「ちょ、やめろって!恥ずかしいだろ・・・っ」
P 「これもお年玉なのだー」ワシワシ
奈緒 「そ、そう言われたら・・・断れないじゃんか・・・」
P (かわいいなぁ・・・)ナデリナデリ
奈緒 (嬉しいけど・・・やっぱ恥ずかしい・・・)
P 「ってもうこんな時間か」
奈緒 「ぁ・・・」
P 「奈緒、そろそろ寝な?初詣に起きれなくなるぞ」
奈緒 「起きれないのはPさんだけどな」
P 「だから奈緒が起きてくれないと俺も起きれない」
奈緒 「ホーント最近のPさんはアタシがいないとダメダメだな」
P 「うーむ、んじゃ今年の目標は奈緒離れすることにしよっかな」
奈緒 「そ、それは駄目だ!」
P 「なんでさ?そっちの方が奈緒も助かるだろ?」
奈緒 「それは・・・その、そう!Pさんの目標はアタシたちをトップアイドルにすることじゃんか!」
P 「確かに!危ねぇ、大事なものをわすれるところだった!」
奈緒 (ホッ・・・)
P 「ひとまず手始めに奈緒用のゴシックシリーズを考えるとするか」
奈緒 「おいおい、仕事モードはまだ早いって」
P 「お、スマンスマン。ついスイッチが入っちまってな」
奈緒 「まったく・・・」
P 「それじゃ・・・そろそろ寝るか?」
奈緒 (っ!?ひ、姫初めっ!?い、いきなりそんな・・・)
P 「夜更かしはホドホドにして、自分の部屋に戻るときはここの電気と炬燵のスイッチ切っといてな」
奈緒 (だと思ったよチクショー!)
P 「んじゃおやすみ」
奈緒 「ああ!おやすみ!!!」

奈緒ちゃんとP。その3。 [SS]

P 「すき焼きの材料調達にスーパーに来たものの・・・冷蔵庫の中、何が入ってたかわかるか?」

奈緒 「それはすき焼きに使うって意味だよな?玉子は今朝アタシが使っちゃってないぞ」

P 「肉がなかったのも確かだ」

奈緒 「あったらプロデューサーさんが食べつくしてるもんね」

P 「あれは肉が俺を呼んでるんだよ」

奈緒 「はいはい。それで?野菜とかはどうか覚えてる?」

P 「いや全く」

奈緒 「聞いたアタシが馬鹿だったか」

P 「ひどい言い草だ。んで、どうなんだ?」

奈緒 「一昨日夕飯作った時はニンジンとか玉ねぎとかそのあたりしかなかったと思う」

P 「肉と野菜両方なしか」

奈緒 「あと割りしたや白滝、焼き豆腐なんかも当然ないぞ」

P 「なんだ、結局全部じゃないか。なぁ奈緒、ひとつ相談なんだが」

奈緒 「へへっ、ゴチになります」

P 「分かったよ畜生」

奈緒 「ほらほら行くよ!アタシが入れてくから、カートの方はよろしく!」

P 「はいはい」





奈緒 「コラ!肉ばっかそんなにいれんなって!」

P 「ヒューヒューヒュー♪」

奈緒 「口笛じゃ誤魔化されないからね」





P 「なぁ奈緒、春菊はちょっと・・・」

奈緒 「好き嫌いすんなよな!いい歳した大人なんだから」

P「と、歳・・・」





奈緒 「こっちの白菜の方が葉がつまってる・・・か?」

P 「なんだか奈緒、主婦力が格段に上がってるな」

奈緒 「誰のせいだよ」






奈緒 「デザートくらいアタシが出すよ。何がいい?」

P 「ハーゲンなダッツ」

奈緒 「おい」





P 「思ったより結構な量になっちまったな」

奈緒 「アタシはこの肉のパックがその原因だと思う」

P 「でも奈緒も食べるだろ」

奈緒 「そりゃそうでしょ。でも・・・袋、重くない?全部持たせちゃってなんだか悪い気が・・・」

P 「いいっていいって。選ぶのとか作るのとかまかせちゃってるし、これぐらいはやらせてくれよ」

奈緒 「まぁ、プロデューサーさんがいいって言うならいいんだけどさ・・・」

P 「それは置いといてだ」

奈緒 「ん?どした?」

P 「スーパーでワイワイしながら一緒に選んで、二人並んでのんびり帰るとか、なんか夫婦みたいだな」

奈緒 「なっ!?ふ、夫婦ぅ!?」アタフタ

P 「お前はアイドルだし・・・そうだな、後十年後くらいか?」

奈緒 「ま、まだ心の準備が・・・」ソワソワ

P 「一体その時、お前の隣にはどんな奴が立っているのかねぇ・・・」

奈緒 「え・・・?」

P 「変な男に引っかからないかとか凄い心配だ。なんだかんだで奈緒は乙女だからなぁ・・・」

奈緒 「・・・。」スタスタ

P 「って奈緒?ちょっと待てって。おーい、奈~緒~?」

奈緒 「知らないっ!」





奈緒 「我が家に帰ってきましたっと」

P 「結局なんでさっき歩くスピードあげたのさ?」

奈緒 「さあね。それじゃ、プロデューサーさんはちょっとここで待っててな」

P 「えー、寒いし荷物重いんだけど」

奈緒 「すぐだからちょっとぐらい我慢しろって。それじゃお先ただいま~」ガチャン

P 「ちぇ、締め出されちった」

奈緒 「もういいよー」

P 「やれやれ、何がしたいんだか」ガチャン

奈緒 「おかえり、プロデューサーさんっ」

P 「・・・へ?」

奈緒 「だからさ、おかえりっつってんだから返事くらいしろよな」

P 「お、おう。ただいま」

奈緒 「へへっ。たまにはこんなのも悪くはないだろ?」

P 「あぁ。なんか・・・いいな、こういうの。うん、ただいま」

奈緒 「はい、おかえり。さ、早く入って夕飯の準備始めようぜっ」

P 「あいよ、りょーかい」



おしまい。

奈緒ちゃんとP。その2。 [SS]

奈緒 「なぁ、プロデューサーさん」

P 「おう、なんだ?」

奈緒 「最近、夜になると凄い冷えるよな」

P 「確かに。昼間あったかいからって薄着すると夜になって後悔するよね」

奈緒 「おいおい、体調管理も仕事のうちだろ?しっかりしてくれよ?」

P 「風邪を引かなければ良かろうなのだァァァァァ!」

奈緒 「ウィンウィンウィンウィンウィン・・・って何やらせんだよバカっ!」

P 「ステージ上の奈緒とかけまして、光のモードのカーズ様ととく。その心は?」

奈緒 「人の話を聞けよっ!」

P 「どちらも頂点で光輝くでしょう~なんつって」

奈緒 「・・・。」

P 「ん?奈緒?」

奈緒 「・・・なぁ、プロデューサーさん?アタシ、ホントになれっかな、トップアイドル」

P 「うん、なれるよ」

奈緒 「即答かよ!もうちょっと考えてくれてもいいんじゃないか?なんだか逆に不安じゃんか・・・」

P 「考えるも何も・・・事実、俺はそう思ってるし」

奈緒 「あ、あのなぁ~。これじゃちょっと悩んでたアタシが馬鹿みたいだろ」

P 「へっへー、奈緒ちゃんのば~か」

奈緒 「腹立つなコイツ」

P 「でもそうやって悩むようになったって言うのも、アイドルとしての自覚が出来てきたってことかな」

奈緒 「・・・うるせぇ」

P 「最初のころはアイドルなんか無理ーとか可愛い格好なんて興味ないーだとか言ってたのに、今じゃ『恥じらい乙女』ですよ、『恥じらい乙女』!」

奈緒 「は、恥ずかしいセリフ禁止!」

P 「どれがよ?」

奈緒 「へ?」

P 「どれが恥ずかしいセリフなんだよ?」

奈緒 「だから、その・・・」

P 「うん?」

奈緒 「恥じらい・・・乙女・・・とか・・・」

P 「ウヒョー!奈緒ちゃん乙女!マジ恥じらい乙女!」

奈緒「だから言うなってそれ!恥ずかしいだろっ!ぶっこおすぞっ!」

P 「はははっ。やれるもんならやってみろ~い」

奈緒 「ムッカー!いつか覚えとけよ?」

P 「はいよ~っと。そんじゃ、寒くなってきたことだし、早く帰るとするか」

奈緒 「だな。なぁなぁ、アタシ、今夜鍋がいいな!」

P 「いいねいいね、たまには奮発してすき焼きでもするか!」

奈緒 「プロデューサーさん、やるじゃん!」

P 「見直した?」

奈緒 「いんや全然」

P 「今夜は奈緒は夕飯いらないっと」

奈緒 「嘘嘘!見直した!すっげぇ見直した!」

P 「このお調子者めっ」

奈緒 「・・・・・・・・・ありがとう、な?」

P 「はて、なんのことやら」

奈緒 「たくさん迷惑かけるかもしんないけど、これからもひとつよろしく」

P 「おう」



おしまい

奈緒ちゃんとP。 [SS]

ちょっと前に友達に送ったのがまだ残ってたんで保存代わりに投稿~
気が向いたら続きとかかくかもしれません。



P 「なあ、奈緒ちゃん」
奈緒 「ん、なんだよ?」
P 「うまそうなどら焼だな」
奈緒「そりゃあたしのお気に入りだからね」
P 「ひ、一口…」
奈緒 「やーだよ、これぐらい自分で買えって」
P 「ふ、ふん、いいもんね!別にお腹減ってないし!」
ぐー
奈緒 「じとー」
P 「あ…」
奈緒 「はぁ…しっかたないな、Pさんは。ほら、一緒に食べようぜっ」


screenshot_2012-10-11_1548.png



そして仕事後。

P 「奈緒ちゃんお疲れ!」
奈緒 「あぁ、Pさんか、お疲れさま」
P 「仕事大変だったろ?お菓子に飲み物、たっくさん用意しといたぞ!」
奈緒 「…口元、あんこ」
P 「なぬ!?」
奈緒 「あたしが汗水たらして頑張ってる中、アンタは食べながら買い歩きしてたって訳だ」
P 「いや、その、そんなつもりは…」
奈緒 「じとー」
P 「ううう、ごめんなさい…」
奈緒 「はぁ」(…ちょっと言い過ぎたかな?)
奈緒 「で、でもよ、その、そっちも…さ?」

screenshot_2012-10-18_1838_1.png

【東方】探して家出っ娘!プロローグ3【紅魔組】 [SS]

どもです。
ひとまず今回でプロローグは終了となります。ちょいと短いですが、ご勘弁を。



 途中で会った妖精に頼みをしつつ、行き来た道をこれまた行き来たように全速力で戻る。花壇のところで思った以上に時間を使ってしまった。急がなければ。
「レミィ、遅いじゃない」
「お待ちしておりました、お嬢様」
 自己最高記録なのでは…という速さで戻るものの、フランの部屋の前に既に二人は集まっていた。パチェは機嫌が悪そうに見えるが…実際にその通りなのだろう。我が愚妹に本棚をひっちゃかめっちゃかにされた怒りは消えず、静かに燃え広がっているようだ。その身体から凄まじい魔力が漏れ出ている。普段怒らない人に限って怒った時ヤバいだなんて世間で言われているのはあながち間違いではないのかもしれない。
 …っと、そんな考察は全部終わってからすればいいだろう。今は話を進めなければ。
「すまないね、ちょいと野暮用で時間を食ってしまった」
 言葉を発しようとした美鈴の口を閉ざすようにして、話し始める。
「さて、ここにみんなに集まってもらったのは他でもない。緊急事態が起きた」
「それは咲夜から聞いたわ?緊急かつ重大な問題だからこそ私たちが集められたのでしょう?違う?」
 パチェが刺々しい。すごく刺々しい。いつもはあんなに大人しい子なのに…。眠れる獅子を起こしてしまったとでもいうのかしら?あー!やっぱり怖ぇよぅ!救いはないのですか!?救いはないのですか!?
「そ、そうね。一応確認したまでだったが、余計だったな。すまなかった」
 ひとつ大きく深呼吸。気を少しでも落ち着かせる。
「ところでこの手紙を見てくれ。こいつをどう思う?」
「すごく…家出です…って家出?フラン様が家出っ!?」
「お嬢様、これは一体!?」
「それはその…なんだ、私もお前たちと同じようにあの子にしでかされてだな、姉として叱ってやらねばと思って怒ったんだが…」
 途中で飛び出していってしまってな、とお手上げポーズ。
「ちょっと待って、外ではもうすぐ満月なのよ?」
 パチェの顔からサーっと血の気が引いてゆく。口にせずともその様子とセリフで何を懸念しているかが読み取れる。だが、私もそれを恐れていた。
「分かっている。だからこその非常事態。時は一刻を争う」
 満月は妖怪の気を高ぶらせる。ただでさえ精神不安定なフラン。しかも只今絶賛グズり中。ふとした何かがきっかけでフランの感情が怒りに染まり、月の力と相まって突発的な破壊行動や取り返しのつかない何かをしてしまうかもしれない。
 そんなのは誰の得にもならない。残るのは遺恨と後悔、そして大きな心の傷。そしてそれはあの子だけではなく、被害者も、その友人も、止められなかった私たちにも大きな十字架として圧し掛かってくるのだ。一生続く後悔とともに。私だけが背負うのならばまだいい。いくらでも耐えて見せよう。だが、私の大事な人たちがそんな目にあうことだけは許容することは出来ない。
「何も起きなければそれでいい。だが、何か起きてからでは取り返しは付かない。大なり小なりあのおバカのせいで苦労をしょっていると思う。だけどみんな、お願いだ。力を貸してくれ…ッ!」
深く深く頭を下げる。館の主としてはなんとも情けない姿だろう。だがそれだけで済むのなら私は何度だって頭を下げよう。
「お嬢様…頭をお上げください。私にとっても妹様は大切なお方なのですよ?」
「いくら本棚荒らされて怒ってるって言ってもね、家族が大変な時に放っておけるほど薄情なつもりはないのだけれど…」
「みんなでフラン様を探して、見つけて、叱って、そして仲直りすればオールオッケーってやつですっ」
 三人のまっすぐな言葉。瞳にはそれに一分の偽りもないことを示すかのような光が宿っている。
私は…いや、私とあの子は幸せ者だ。こんなにいい家族に恵まれて。
「みんな、すまない―――いや、ここは謝るべきところではないな」
 ありがとう。心からの笑みを添えて、それを口にする。
「それではみんな、作戦会議よ!」
「「「了解!」」」
 さぁ待ってなさい、フラン!お姉ちゃんたちが絶対連れ戻してやるんだから!

【東方】探して家出っ娘!プロローグ2【紅魔組】 [SS]

タイトルが決まりました。以後、「探して家出っ娘!」をよろしくお願いします。
とは言え、シナリオ案の提供の副産物のようなものなので、動画の方と違って続くかどうか・・・^^;
気の向くときにちまちまと書いていくとしますか~

それではプロローグ2(前回の続きです)、よろしければどうぞ。




探して家出っ娘!プロローグ2

『しーん……………………。』
 って部屋の中で叫んでどうするのよ私!美鈴は門、パチェは図書館にいるんだから聞こえるわけないでしょうに!唯一すっ飛んでくる可能性のある咲夜はお使いに出てもらってるから言わずもがな。もし仮に聞こえてたら地獄耳もいい所。尚且つ帰ってきてたらもはや変態。でもいくらウチの子とは言えそんな人知を超えた真似―――
「お呼びでしょうか、お嬢様」
「君の姿に感動した」
 サクトラマンが…帰ってきたっ!
 …え、帰ってきた?
 なぁにぃ!?
「さ、咲夜!?なんであなたここにいるの!?」
「時間を止めながら走って参りました」
「そういうことを聞いてるんじゃなくって!」
「そもそもお嬢様がお呼びになられたのでは?」
「いやまぁそうなんだけど!?」
 落ち着け落ちケツ落ち着くんだ私。そして逆に考えるんだ。そもそもこの子は人間超越しちゃってるようなもんだから、人知を超えた真似しちゃってもいいって考えるんだ。
 ワンツーレミィで納得する、ワン、ツー、レミィ!はい納得した。
「ゴホン。さて、本題に入ろうか」
(あたふたするお嬢様も愛くるしいですが、キリッとしたお嬢様も凛々しくて素敵です…)
「今現在、屋敷の中で非常事態が起こっている。咲夜はパチェをこの部屋の前まで連れてきなさい。私は美鈴を呼んでこよう。内容は無駄な混乱を避けるためにメンバーが揃ってから通達するものとする」
「質問よろしいですか?」
「何かしら?」
「お話から察するに…外部からの侵入者は無しと思われますが、襲撃の危険性も無しと考えてよろしいですか?」
「えぇ。それで構わないわ」
 いくらなんでもあの子が私たちを襲うなんてことはないでしょうし。
「はい、畏まりました。それではパチュリー様を呼んでまいります」
 能力を行使し、あっという間に視界から消えてゆく咲夜。私もこうしちゃいられない。早く美鈴を呼んで来なくては。

 廊下を駆け、門へと急ぐ。廊下は走ってはいけません、などとはるか昔にならったような気もするが、今はそんなこと気にしている場合ではない。そういえば「廊下を走らない」で思い出したけれど、避難の際の「お・か・し」ってあるじゃない?あれって、「押さない」「駆けない」「喋らない」の頭文字つなげた奴だけど、大昔に「押さない」「駆けない」「死なない」の方が正しいって力説してるやつがいたのよ。それを聞いたとき、幼心になるほど、と思ったね。死んじゃ元も子もないもの。
 …なんて話が脱線しているうちに門へ到着。
「美鈴、いるわね?」
「しくしくしくしくしくしく…」
 泣き声はあれど姿なし。と言うことは花壇かしら?
「コラ美鈴、お前の仕事は門番だろう?門前で突っ立ったまま寝るのはまだいいが、勝手に門をはな―――」
 え?
 あ…ありのまま今起こった事を話すわ!
『門を勝手に離れていた美鈴を叱ろうと思ったら美鈴が花壇の大きい穴の中にうずくまって泣いていた』
 格好的に、暗いよ狭いよ怖いよを想像するといいかもしれない。
「めい…りん…?あなた、どうしたのよ?」
「レ゛ミ゛リ゛ア゛様ぁ~!お花が…私のお花がぁ~!」
 戸惑いながらもしゃがみこんで声をかけると、涙目の美鈴が急に抱きついてきた。こ、コラ美鈴!こんな薄い胸なんかに顔埋めてないの!埋めたきゃ自分のでやってなさい!…なんて言うことも出来ず、よしよしと頭を撫でる。なんて大きな子供だ全く。…他意はないぞ?
 周囲を見渡せば、美鈴のいるクレーターを中心に千切れ飛んだ茎、葉、蕾が散乱していた。花壇を囲う煉瓦も砕けていたりひびが入ったり。いうなれば花壇全体壊滅状態だ。一応隅っこの方に無事なのもちらほら残ってはいるものの、余波にやられたのか、いかにも元気がない。
 聞いていた以上にフランの奴が暴れてくれちゃったようだ。美鈴、花が咲くの楽しみにしてたものね。そりゃこんな有様じゃ心折れちゃうのも仕方ない、か。でも生憎その感傷に浸らせてあげられるほどの余裕は今はないのだ。早くいつもの美鈴に戻ってもらわないと大変なことになる。こうなったら目には目を、歯には歯を、熱血には熱血じゃい!
「ねぇ、美鈴…?」
「ぐすっ…なんでしょうか…?」
 ぺちっ。軽くやさしく頬を張る。
「その顔は何だ?その目は!その涙は何だ!そのお前の涙で…この花壇が救えるのか?」
「レミリア…様?」
「落ち込むなとは言わない。お前がどれだけその花壇に愛情を注いできたかは分かっているつもりだ。だが、目を反らすな。現実を見ろ。そして残ったものに気づけ」
「あっ…隅っこの方…!」
「花壇は後でみんなで直そう。もちろんあの愚妹も一緒にだ。そしていつか美しく咲くであろうその花を私に見せてくれ」
「はい…はいッ!」
「さて、ここからは“仕事”の話だ」
 表情とともに、場の空気が一瞬にして変わる。ふぅ、何とか立ち直ったようね?
「今、紅魔館内でてぇ変なことが起こっている。侵入者がいるわけではないので襲撃の恐れはないのだが、私、お前、パチュリー、咲夜であたらねばならないだろう。詳細は無駄な混乱を省くために、今言ったメンバーが揃い次第伝えよう。ひとまずは私についてきてくれ」
「はっ。おおせのままに」
 さてと、結構時間を食っちゃったみたいだし、早くフランの部屋に戻らなくっちゃ。でも、そ・の・ま・え・に…。
「フッ…、安心しろ。花壇の応急処置は妖精メイドにやるよう手配しておく。お前は安心して任務にあたれ」
「レミリア様…感謝いたします」
 不安は取り払ってあげとかないとね?

…プロローグ3へ続く
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【東方】探して家出っ娘!プロローグ1【紅魔組】 [SS]

本作は東方プロジェクトの二次創作となります。
主人公は紅魔館組ですが、こんなのおれのレミィじゃない!フランじゃない!などという可能性が大です。
また、動画と同じく相変わらずのgdgdなかほりがプンプンいたします。

それらが大丈夫な方のみお読みください。

※5月8日追記:タイトルが決まりました


0、プロローグ

「お姉さまのバカー!もう知らないんだから!」
「ちょっとフラン!?待ちなさい!?」
 慌てて手を伸ばすも霞をつかむ。その間に妹はきれいな金髪をはためかせ、飛ぶ様に広間を出て行ってしまった。まぁ実際に飛んでいたのだけれども。我が妹ながら良くあんな細い羽根で飛べるもんだとお姉ちゃん感心しちゃうわホント。
 それにしても、全くあの子にも困ったもんだ。なんと言ったらいいんだろうね、子犬?それともよちよち歩きを覚えたばかりの赤ん坊?あっちにいったりこっちにいったりそっちにいったり、挙句の果てにどっちにいったか分からなくなったり。かと思えば、いたずらしてたり、誰かにちょっかい出してたり、わがまま言いだしたり…。
 確かに今まであの子には辛い生活を送らせてしまっていた。だからその反動とでもいうのかしら?あの子が色んなものに興味を持って活動的になっているのは姉としてとても嬉しいし、たくさんのことを知ってあの子の世界をどんどん広くしてもらいたいって思う。
 けれど。けれどだ。
 美鈴の花壇を荒らし、パチェの本の山を崩し、咲夜のティーセットを割り、そして私の、私の…ッ!
あぁ――――――――――――ダメだ。
この怒り、どうして抑えることができようか。
思い出すだけで湧き上がる憤怒。血が沸騰し、拳は戦慄き、身体が燃える。
―――我を誰と心得る?紅魔の主、レミリア・スカーレット。誇り高き吸血鬼なるぞ。滅びこそ我が喜び。死にゆく者こそ美しい。さぁ、我が腕の中で息絶えるがよい!
…ってああもう!何やってんのよ私。相手は妹でしょうが。ここはお姉ちゃんらしく寛大な心で…寛大な…こころ…で………うん、それ無理。むしろアレよね、やっちゃいけないことしたらビシッと叱ってやるのが「いいお姉ちゃん」よね。間違いを間違いって指摘してあげなければ、きっとまたやってしまうだろう。過ちは、繰り返させない!

「フラン?私だ、お姉ちゃんだ」
 妹の部屋をノックして尋ねる。もちろん、母性に満ち溢れる優しい声でかけるのも忘れない。あぁ、なんていい姉なのだ私は。
「さっきは急にどなって悪かったわ。私も反省している」
 かつ、相手を叱るよりも先に自分の非を詫びる。素晴らしきかな、オトナのオンナ。これぞ出来女。
「だけどあなただってやっちゃいけない事をしたのよ?さぁ、扉を開けて出ていらっしゃい?みんなにきちんとごめんなさいしなきゃでしょ?」
そして無理やり謝らせるのではなく、あくまで自発的に謝ることを促す。ココ大事。これからフランが外の世界で生きていくことになった時、謝罪ひとつ出来ない人間(いやまぁ吸血鬼なんですけど)はやっていけない。お友達だって怒らせちゃうし、下手すれば仲間外れにされちゃう。そんなこと断じてゆ゛る゛さ゛ん゛ん゛ん゛!
だが、しかしだ。
「ちょっとフラン?聞いてるの?」
 姉がここまで言っているのに返事一つしないというのは何事か。
「聞いているのなら返事の一つくらいしなさい!」
 さすがにここまでされるとムカッと来ちゃうわね。空笑いが止まらないわ。ははは。
「………フラン?これが最後のチャンスよ?返事をしなさい。もしくは扉を開けなさい」
「……………。」
しーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん。
『プツン』
切れた。私の身体の中で何かが切れた。決定的な何かが。
「フラン!あなたねぇ!」
 扉を蹴破って部屋に押し入る。もう許さない。君が謝るまで私は怒るのをやめない!
「自分が何をしたか分かって…る……の?」
 あれ?あれれ?
 部屋には誰もいなかった。小さく灯るランプ。呆然と突っ立ている私。開けっぱなしの窓からそよぐ風が私の髪をくすぐってゆく。それが心地よかったのと、拍子抜けしてしまったのとで、一気に怒りの風船はしぼんでしまった。
 はぁ…。何なのよこれ。ため息をつきながらぼふんとフランのベッドに仰向けで横になる。視線を少しずらすと、星空が視界に飛び込んできた。そして少し欠けた満月。まさに自然の描く未完成の芸術。不完全な今でさえ、透き通るようなその光を浴びるだけで己の妖気が高まっていくのを感じる。もうすぐで満月。きっとその晩は祭りのようになるのだろう。そうだ、あの子と一緒にお月見をするのもいいかもしれない。星を眺め、その時を夢想する。
 どれだけそうしていただろうか。ふと視線を動かした時、ベッドの横の小さなテーブルの上に一枚のメモのようなものが乗っているのに気がついた。なんだこれ、と手を伸ばし、紙面を見る。

『おねぇさまへ いえでします。さがさないでください ふらん』

「どういうことなの…?」
 頭が回らない。理解ができない。思考が追いつかない。
「嘘でしょ、コレ」
指先がチリチリする。口の中はカラカラだ。目の奥が熱いんだ!
「フランの!フランの馬鹿-------っ!」
 なんてことしてくれるんだコイツは!
「美鈴!パチェ!咲夜!みんな集まりなさい!非常事態よ!」

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