【東方】探して家出っ娘!プロローグ3【紅魔組】 [SS]

どもです。
ひとまず今回でプロローグは終了となります。ちょいと短いですが、ご勘弁を。



 途中で会った妖精に頼みをしつつ、行き来た道をこれまた行き来たように全速力で戻る。花壇のところで思った以上に時間を使ってしまった。急がなければ。
「レミィ、遅いじゃない」
「お待ちしておりました、お嬢様」
 自己最高記録なのでは…という速さで戻るものの、フランの部屋の前に既に二人は集まっていた。パチェは機嫌が悪そうに見えるが…実際にその通りなのだろう。我が愚妹に本棚をひっちゃかめっちゃかにされた怒りは消えず、静かに燃え広がっているようだ。その身体から凄まじい魔力が漏れ出ている。普段怒らない人に限って怒った時ヤバいだなんて世間で言われているのはあながち間違いではないのかもしれない。
 …っと、そんな考察は全部終わってからすればいいだろう。今は話を進めなければ。
「すまないね、ちょいと野暮用で時間を食ってしまった」
 言葉を発しようとした美鈴の口を閉ざすようにして、話し始める。
「さて、ここにみんなに集まってもらったのは他でもない。緊急事態が起きた」
「それは咲夜から聞いたわ?緊急かつ重大な問題だからこそ私たちが集められたのでしょう?違う?」
 パチェが刺々しい。すごく刺々しい。いつもはあんなに大人しい子なのに…。眠れる獅子を起こしてしまったとでもいうのかしら?あー!やっぱり怖ぇよぅ!救いはないのですか!?救いはないのですか!?
「そ、そうね。一応確認したまでだったが、余計だったな。すまなかった」
 ひとつ大きく深呼吸。気を少しでも落ち着かせる。
「ところでこの手紙を見てくれ。こいつをどう思う?」
「すごく…家出です…って家出?フラン様が家出っ!?」
「お嬢様、これは一体!?」
「それはその…なんだ、私もお前たちと同じようにあの子にしでかされてだな、姉として叱ってやらねばと思って怒ったんだが…」
 途中で飛び出していってしまってな、とお手上げポーズ。
「ちょっと待って、外ではもうすぐ満月なのよ?」
 パチェの顔からサーっと血の気が引いてゆく。口にせずともその様子とセリフで何を懸念しているかが読み取れる。だが、私もそれを恐れていた。
「分かっている。だからこその非常事態。時は一刻を争う」
 満月は妖怪の気を高ぶらせる。ただでさえ精神不安定なフラン。しかも只今絶賛グズり中。ふとした何かがきっかけでフランの感情が怒りに染まり、月の力と相まって突発的な破壊行動や取り返しのつかない何かをしてしまうかもしれない。
 そんなのは誰の得にもならない。残るのは遺恨と後悔、そして大きな心の傷。そしてそれはあの子だけではなく、被害者も、その友人も、止められなかった私たちにも大きな十字架として圧し掛かってくるのだ。一生続く後悔とともに。私だけが背負うのならばまだいい。いくらでも耐えて見せよう。だが、私の大事な人たちがそんな目にあうことだけは許容することは出来ない。
「何も起きなければそれでいい。だが、何か起きてからでは取り返しは付かない。大なり小なりあのおバカのせいで苦労をしょっていると思う。だけどみんな、お願いだ。力を貸してくれ…ッ!」
深く深く頭を下げる。館の主としてはなんとも情けない姿だろう。だがそれだけで済むのなら私は何度だって頭を下げよう。
「お嬢様…頭をお上げください。私にとっても妹様は大切なお方なのですよ?」
「いくら本棚荒らされて怒ってるって言ってもね、家族が大変な時に放っておけるほど薄情なつもりはないのだけれど…」
「みんなでフラン様を探して、見つけて、叱って、そして仲直りすればオールオッケーってやつですっ」
 三人のまっすぐな言葉。瞳にはそれに一分の偽りもないことを示すかのような光が宿っている。
私は…いや、私とあの子は幸せ者だ。こんなにいい家族に恵まれて。
「みんな、すまない―――いや、ここは謝るべきところではないな」
 ありがとう。心からの笑みを添えて、それを口にする。
「それではみんな、作戦会議よ!」
「「「了解!」」」
 さぁ待ってなさい、フラン!お姉ちゃんたちが絶対連れ戻してやるんだから!

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。